北アルプス 朝日小屋

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黙々と…

2002-11-04

 徳本峠へと向かう私    02.10.29 photo by morishita

 〈その5〉…ラッセル

 10月29日は、徳本峠へ向かう道をずっと森下さんがトップでラッセル。その足運びはリズミカルに同じ歩幅で刻まれ、その足跡はずっと規則正しく続いていました。私はその後を黙って付いて行けば良かったのです。
 
 「少し行って来ますか?」
 翌30日は、朝から抜けるような青空がとても気持ち良い日で、森下さんに誘われて出発準備を始めました。目的地は霞沢岳の途中にある見晴し台、通称“スタジオ・ジャンクション”。
 
 「先頭、歩いてみますか?」
 前日にかなり楽をさせてもらったので今日は私も少し頑張らなくては、そんな気持ちでトップを歩くことにしたのですが。。。(少々意地もあった!?)
 樹林帯の中で高度が上がるにつれて、雪は私の腰以上、急斜面に向かい合って深い所では胸下まで来ることもありました。もちろん一歩踏み出しても、私の足はその高さまでは届きません。
 前日森下さんの後ろを黙って歩きながら観察し見ていた通りに(前日は余裕だった!)、私もやってみました。…足が届かなければ胸や膝で雪を押し崩す、ちゃんと右左と足で雪を固める、グッと自分の身体を押し上げる、慌てないでペースを崩さずに…
 
 「どうです?…頭の中が空っぽになったでしょう!?」
 う〜ん、どうかなぁ。。。いろいろ考えることが多くて(笑)。
 
 「ゆかりさんのラッセルは、まるで“ラッセル車”みたいですね」
 上手だと褒められたのかと思ったら、むやみに雪を蹴散らしている様子がそんな風に見えたのだとか、あらあら(笑)。

 でも自分では何もしないで後ろから見ているだけだと、その苦しさや辛さが自分のものにならず、何もわからずもっと楽に見えたトップでしたが、実際自分でやってみると、先頭を歩くということがどんなに大変なことかという事が良く分かりました。
 生まれて初めてのトップでのラッセル。。。いろいろ勉強になりました!!