「犬連れ登山」考
2003-03-24
先日の掲示板に、“さくらさん”からの書き込みがありました。皆さん、ご覧になりましたか?「全国犬連れ登山コースガイド」…こんなホームページがあることに驚き、早速開いてみると…。
正直言って、本当にビックリしました。北は北海道から南は九州までの山、それもホンの里山だけでなく、首都圏の人気の山、2,000mを超える本格登山の山、アルプスの山までもが、「犬連れ登山」のコースとして紹介されているではありませんか。
この日記を書くに当り、今朝、富山森林管理署業務課管理係長の米澤さんにお話を伺いました。米澤さんもホームページの存在には当惑した様子で、最近の管内での登山者の動向や現状を話してくださいました。
実は、富山県内あるいはその他の地方自治体でも、森林管理署と各行政等の関係者、私たち山小屋関係者等などが集まって、国有林野を保護管理する目的で様々な連携を図っています。
(国立公園内での話に限定しますが)特に富山県内では、昭和46年のアルペンルート全線開通に伴い立山地区で始まった夏季の高山植物保護パトロールは平成13年で30周年を迎えましたが、これらの事業をはじめとして、国立公園内での高山植物等のかけがえのない自然環境の保全には、登山者自身の自然保護思想の普及とともに力が注がれている昨今です。
通称「グリーンパトロール」と呼ばれ、現在も続いている高山植物保護の活動では、『踏み荒らし』『高山植物採取』『その他(焚き火・花火他)』と並んで、『ペットの持ち込み』が登山者への「口頭注意事項」とされています。
しかし実際は、国立公園内でもこれら注意事項を遵守させる為の法規制は無く、法による罰則も無いということです。従って、自然保護に大きな影響を及ぼすこれらの行為をどう捉えるかは、登山者やハイカー各人の考え方や常識による判断に任せるしかないというのが現状だそうです。
昨年来、立山一帯での雷鳥に『原因不明の皮膚病』が見つかったという記事を読まれた方も多いと思いますが、これには高山に多くの人が入山することによって持ち込まれる可能性のある「病原菌の広がり」が最も懸念されています。
高山植物や鳥獣保護などの自然保護の観点から、「ペットの持ち込み」によって起こる生態系への影響、特に雷鳥などの希少動物に与える害が考えられます。
観光客の入り込みも多い立山一帯では「ペット同伴」の事例も多く、昨年グリーンパトロールが口頭注意した中で「ペットの持ち込み」は22件ありましたが、その前年の5件に比べると4倍以上の数となっています。ペット連れの理由としては、「家族同然・家族の一員だから」が一番多かったそうです。
昨シーズンの朝日小屋でも、犬連れのお客様は3件ありました。
米澤係長の話では、国段階での法規制は未だですが、県や市町村の各地方自治体での規制が早急に検討されつつあるそうで、また立山一帯ではスキーヤーやスノーボーダーの入り込みを規制してはどうかという動きもあるそうです。
山の中で、溢れかえる人間なら許されるけどペットはダメなのか、人間の排泄汚物は生態系に影響はないのか、昔は狩猟犬がいたではないか、…等など様々な意見もあるかもしれません。
しかし、「犬を山へ連れて行く」ことの何が問題なのか…はっきりしているのではないでしょうか。
この記事の URL : http://asahigoya.net/diary/2003/03/d20030324a.html