北アルプス 朝日小屋

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静寂と新緑…恵振山7合目上部まで

2003-05-23

深い深い静寂の中   5合目のブナ林   03.5.20

 深い深い静寂の中   5合目のブナ林   03.5.20

 19日(月)から2泊3日の行程で、北又小屋をベースに恵振山7合目の上部まで行って来ました。今回の山行は、写真家の森下 恭さんが北又周辺〜恵振山のブナの新緑を撮影したいと希望されて実現したものです。
 今の時期、町道湯ノ瀬〜越道峠〜北又線は整備が終わっていないので通行止めですし、北又周辺と恵振山は残雪で夏道(登山道)は不明瞭な箇所だらけで危険です。また、“熊”が出没しますから誰もが容易に入山できるということはありません。
 そんなわけで今回は、私も所属する大蓮華山保勝会会員でまた地元の猟友会に所属し、その上朝日岳方面遭対協の救助隊員でもあるという方にガイドをしてもらいました。
 一緒に行ったのは、ガイド役の水野幸正さん(コーちゃん)、写真家の森下 恭さん、北又小屋の小屋番をしている長津一雄さん、そして私の4名。
 初日は北又小屋まで行き、周辺を散策しました。夕方、今の時期水量が豊富で見ごたえのある「北又の三段滝」を見た後、コーちゃんから山菜の取り方や植生、野生動物のこと等などを教わりながら歩きました。
 そして“未知との遭遇”−「熊」との接近!! …約30メートル程の距離でした。残念ながら、デジカメに収めることは出来ませんでしたが、生まれて初めての貴重な体験でした。
 2日目は、7合目辺りまでの予定で恵振山を登りました。
 恵振山〜朝日岳周辺は、まだまだ手付かずの自然が残された大変貴重な場所です。「高山植物の宝庫」ということだけでなく、特に森下さんが注目し今回の撮影目的とされた「ブナの原生林」は、『大蓮華』と称される朝日岳〜白馬岳にかけての山域の、豊かでありのままの自然を象徴するものに違いありません。
 当日の天候は曇り、ガス、霧雨、そして時折見える薄陽…。
 「ブナの林には、こんな天気がよく似合うんですョ」
 ボソッとそんなことを言いながら(微笑)、森下さんの撮影は順調に進みました。
 ほぼ登山道沿いに歩きましたが、5合目のブナ平付近から上は残雪が多く、コーちゃんが撮影ポイントとなりそうな場所を案内しながら、たっぷりと時間をかけて登りました。
 5合目のブナは新芽が吹いてから少し経っていましたが、それでも残雪も多く、まだまだ新緑から若葉への移り変わりを楽しむことが出来ました。
 また7合目の先まで上った頃には濃いガスが霧雨に変わりましたが、ちょうど今が芽吹きの時とばかりのブナが花を咲かせており、水滴を付けた黄緑色の新葉がとても印象的でした。
 7〜8合目の中間点辺りからはまだまだ残雪の量も多く、急に切れ立った状態の雪渓が続いていましたし、また森下さんの撮りたいポイントも過ぎたので、登りはそこまで。
 ところがバックして5合目のブナ平まで戻ると、行きの時には濃いガスで何とも鬱蒼として幻想的だった林の中が、今度はガスも適当に晴れてきて上りに通った時とはまた違った表情のブナに出逢うことができました。またまた森下さんの撮影タイム、じっくりと時間をかけて自然の姿を撮っていらっしゃいました。
 21日は、コーちゃんと私で下山。もう一日撮影したいとおっしゃる森下さんと長津さんは22日の下山となりました。
 朝日岳に登り始めた小学生の頃から付き合いがあるコーちゃんと、「おーッ、ゆかりとこうやって3日間も歩くのも、珍しいなぁ。昔、八兵衛平や照葉の池辺りへ遊びに行って以来やな」等と話しながら下って来ました。
 いろいろあった『感動の3日間』の様子は、到底一度には書ききれません。
 感じたこと、学んだこと、心に刻んだ想い…等など、また折に触れ綴っていきたいと思います。