『アルプスと日本海を繋ぐ』…海抜0メートル地点
2003-05-30
4月以降、あちらの山こちらの山へと「コレも仕事!、いつも勉強!」と出掛けていた私、朝日小屋管理人・清水ゆかり。
ところが今回は、ナント日本海の船の上からのレポートをお届けします(私、満面の笑み!)。
なんで、「山」でなく「海」なのか…話せば長くなるのですが。
新潟県青海町の駅前に「長野屋」さんというお菓子屋さんがあります。ここの奥様・ひとみさんはさわがに山岳会の小野 健さんとよく山を歩かれる方ですが、私にはお姉さんのような雰囲気でいつも優しくしてくださり、これまで何回か栂海新道をご一緒したり朝日小屋へも遊びに来て下さっています。
そんなご縁があって昨年から、「長野屋謹製・栂海新道」(抹茶味のきんつば)という、とても美味しいお菓子を朝日小屋の売店に置くようになりました。
24日、翌日の「海のウエストン祭」を控えて小野さんのご自宅で開かれた前夜祭に、写真家の森下さんと出掛けた私。途中、長野屋さんにご挨拶に立ち寄りました。
そこで、森下さんが「いつの機会にか、アルプスの起点となる日本海の0メートル地点からの写真を撮ってみたい」と話されたのですが、それを聞いたひとみさんのご主人・公博さんが「船の上から写真を撮りますか?」と、誘って下さったのです。「まぁ、いつかそんなチャンスがあったら、ぜひ…」という話だったのですが。
白鳥山の山開きに参加し、その後白鳥小屋と栂海山荘に泊まって28日まで写真を撮っていた森下さんが下山し、再び長野屋さんへ寄られたら「明日、天候も安定しているようだし、仕事も空けられるから、船を出しましょう!」と話がトントン拍子に決まりました。
29日早朝、糸魚川港から公博さんがご自分のプレジャーボートを出して下さいました。小野さん、森下さん、ひとみさん、そして私が乗船し、朝陽が昇る前の穏やかな波に迎えられて海岸沿いを日本海へ!
船は初めての私は、かなり興奮気味!
山の上から見る朝焼けはいつ見てもとてもステキで感動的ですが、日本海の水平線から昇る朝陽が、静かに揺らめく波に映ってキラキラ輝く様もそれはそれは素晴らしく、何も言葉は要らないくらい心の中がシーンとしていました。
海での夜明けを迎えた後もボートは海岸線に沿って走り、途中白鳥山や犬ヶ岳の姿を確認しながら、森下さんの写真撮影のため場所を親不知・天険の急峻な絶壁の下へと移動。
今は海沿いを走る国道が整備され、高速道路が山の中を横に貫け、いずれは北陸新幹線も通る予定ですが、日本海から見あげて見ると、海抜0メートルのホンの数メートル上から樹木が鬱蒼と生い茂り、国道を横切る親不知には「栂海新道」の入口、そしてその向こうには脈々と連なる尾根がアルプスの山並みへと続いていることがはっきりと確認できました。
森下さんも私も、皆さんのご厚意に恵まれて思いがけないチャンスで、「山と海」との接点、アルプスに繋がる山並みを海の上から仰ぎ見ることができて本当に幸運でした。
『アルプスと日本海を繋ぐ』…いろいろな意味で、その重要な位置に建てられている朝日小屋の責任者としての自覚を改めて感じるとともに、ロマンの原点を胸に刻んだ日となりました。
この記事の URL : http://asahigoya.net/diary/2003/05/d20030530a.html