北アルプス 朝日小屋

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「三郎杉」のこと

2001-09-29

 「三郎杉」… ピンク色のビニール紐は調査用の目印

 27日、新潟大学大学院・自然科学研究科の平英彰教授が学生さんを連れてお見えになりました。

 平先生は15・6年前から朝日岳へ年に2回程づつ調査に入っていらっしゃいます。私は今までお会いする機会がなかったのですが、夏に続いて今年2回目の入山は、ちょうど小屋が暇な時でもありいろいろお話しする事ができました。

 そして、今まで話しに聞いていた「三郎杉」も、先生の案内で私自身が確認する事ができました。

 「三郎杉」… もちろんこの名前は「下澤三郎」本人と小屋のアルバイトの皆がそう呼んでいたらしいのですが、平先生のお話しによると学名等はもちろん別にあるわけで、ただ発見した人やそれに関わる人の名を冠する事はかなり自由ならしく、私たちが「三郎杉」と呼ぶのは全く構わないということでした。

 「三郎杉」は、亡き父が朝日岳周辺をいろいろ歩いていた時に偶然見つけたそうです。そしてたまたま新聞で標高の高い地点にある「杉」の記事を読んだ父が平先生に連絡し、平先生が確認されそれ以来毎年調査に訪れるようになったと話して下さいました。

 日本で一番標高の高い所にある「杉」は毛勝山の2070M付近にあるそうですが、それに次ぐものとみられる「三郎杉」の地点の標高は約2060M。ネズコやオオシラビソの木々に混ざって、その「三郎杉」はありました。樹齢は大体350年程と推定されるそうです。

 「杉」という樹木の特徴やいろいろな条件からしても、その昔、この朝日岳にも杉はもっと存在していたと考えられ、まさに「地球温暖化」の影響等で「森林限界」が大きく変化してきている…平先生のお話しは、初めて聞く私には驚きの内容ばかりでした。そして他にも高山植物や樹木の話し等など、分かりやすく教えていただく事ができました。これからもまだまだいろいろ聞かせていただきたいと思いました。

 そして、亡き父の名前を付けて呼んでいる「三郎杉」…風雨や冬の豪雪にも、その枝を柔軟にしならせ、またしっかり山の急斜面に根を張り頑張る姿には心を打たれるものがありました。

 「朝日小屋の管理人」として知っておくべき事実がここにも存在していました…。