北アルプス 朝日小屋

朝日小屋 TEL 080-2962-4639(衛星電話)
北又小屋 TEL 0765-84-8809
開設期間外 朝日小屋連絡所
 〒939-0711 富山県下新川郡朝日町笹川 清水ゆかり
 TEL & FAX 0765-83-2318

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後ろ姿

2003-05-27

いつも頼もしい後ろ姿、阿曾原温泉小屋の佐々木 泉さん   

 いつも頼もしい後ろ姿、阿曾原温泉小屋の佐々木 泉さん   

             宇奈月・朝日 両遭対協合同訓練にて  03.5.17

 黒部の険しい峡谷はどこまでも男性的な荒々しさを誇り、朝日岳のその穏やかな山容は女性的と形容されます。
 切り立った断崖絶壁の続く水平歩道や下の廊下を歩かなければ辿り着けない阿曾原温泉。縦走路を歩いてやっと着いた朝日平は、のどかでノンビリとした雰囲気の「お花畑のど真ん中」。
 阿曾原温泉小屋は、その立地条件ゆえ毎年取り壊す為のプレハブ造り。赤い三角屋根が目印の朝日小屋は、今年で築18年になりますがまだまだしっかりした新しい山小屋。
 阿曾原温泉小屋は、山奥にありながらボッカらしいボッカはなし。食料その他の調達はそれ程問題はないとのこと。ただし、小屋を取り壊した後の冬の間の荷物は移動しなければいけないらしいけれど。
 朝日小屋は、ヘリコプターでの荷揚げと北又からの人力によるボッカによって物資の調達をしています。特に食料の仕入れはまるで「博打」のようで(笑)、シーズン中は最後の最後まで気が抜けません。
 阿曾原温泉の繁忙期は、水平歩道や下の廊下が完全開通する9月中旬以降10月下旬までの約1ヶ月間。登山者の皆さんは峡谷の紅葉を楽しみに歩かれます。
 一方の朝日小屋は、7月中旬から8月お盆までの1ヶ月間が最盛期。多くの登山者は、咲き乱れる夏の高山植物を目当てに朝日岳へ足を運ばれます。
 その阿曾原温泉小屋のオーナー・佐々木 泉さんは、元富山県警山岳警備隊員として数々の遭難救助に尽力し、小屋の経営に携わるようになってからも、黒部の山を隅々まで知り尽くし登山道の整備や草刈り、登山者の安全確保にいつも汗を流していらっしゃいます。
 片や、朝日小屋の管理人・清水ゆかりは、いつまでも「朝日岳しか知らない」「山を歩くのは苦手」とノタマイながら(苦笑)、それでも管理人らしく在りたいと、今一生懸命“勉強中!”。
 泉さんは、その巨漢、風体から「黒部の熊」「黒部峡谷のビック・ベア」とあだ名されているらしい。ゆかりは、……!?(笑)。
 泉さんは、もちろんアルコール大好き!。身体からして、飲む量だってきっと半端じゃないと思います。何と言っても「熊さん」ですから。私は決してお酒はキライなわけではないし、陽気なお酒の席も大好きだけど、父に似て量はホドホド以下で、コップ一杯のビールで顔は真っ赤。 
 泉さんが県警山岳警備隊員として活躍されていた頃、ちょうど入善署勤務の時期がありました。父はいろいろお世話になっていたようですが、その時私はすでに結婚して山には入っておらずすれ違いでしたから、泉さんの存在は話の中でしか知りませんでした。

 こうやってみると、共通項のないそんな全く条件の違う2つの山小屋のオーナーと管理人ですが、山小屋協会では同じ「黒部観光旅館組合」に所属しており、峡谷鉄道沿線の組合員さんが多い中で、実際に山小屋に入って切り盛りしている者同士ということで、私が父に代わった直後からいろいろとお世話になっています。
 宇奈月町に生まれて小さい頃から黒部の山や川を見て育ち、いつも山のことや自然環境の保護を考え、山小屋を利用する登山者のことや、下の廊下一帯を歩く登山者の安全を第一に考え行動する泉さんの姿勢には、学ばされることが多く本当に頭が下がります。
 歳も近く、同じ組合に所属していますので、いろいろ相談する機会もあります。これからもその“大きな背中”に教えられながら、私も少しでも“一人前の管理人”に近付きたいと思っています。
 (歳は私の方がチョコッと上ですが)…頼りにしています、先輩!!