昨日の件について
2006-07-04
富山県内の一部報道機関であったように(県内の方しか知らないかもしれませんが)、一昨日から昨日にかけて、朝日岳周辺(正確には、栂海新道)で「遭難騒ぎ」がありました。
幸いにも、捜索願が出されてから4時間足らずで自力下山され、事なきを得たのですが、教訓とするべきこともあると思いますので、少しだけ述べさせて頂きます。
(ただし、自力下山されていますので、余計な詮索はなさらないで下さい。)
60代、男性。単独。
親不知のホテル(泊)〜白鳥小屋(泊)〜栂海山荘(泊)〜朝日小屋(泊予定)
10日間の予定で、針ノ木小屋か船窪小屋まで
朝日小屋に2食付きで宿泊の旨、白鳥小屋から連絡有
アヤメ平付近で、以後の行程を断念。中俣新道を下る
途中滑落し、受傷
その結果、朝日小屋にはその日の夜・翌日の朝にも到着せず、騒ぎとなる
この方の場合、事前の情報収集もされたかと思いますが、さわがに山岳会の小野さんにも朝日小屋にも、入山前に一度の連絡もありませんでした。
この夏山シーズンの始まりの、しかも例年以上に残雪の多さが言われている今シーズンに、どこへも1本の電話も入れずに(宿泊予約も無し)入山することは、かなり軽率あるいは安易だったのではないかと思われます。
今の時期の栂海新道は、例年黒岩平を中心にかなりの残雪量です。
昨年の夏山事前パトロールの際の写真も、昨年の小屋番日記に載せてありますが、特にガスった場合には全く右も左も分からなくなるくらい、黒岩平周辺はこの時期一面の雪があります。
またアヤメ平と長栂山の間には、垂直に近いような急斜面があります。夏道にはハシゴが架けてあるので大丈夫なのですが、残雪期にはピッケルも12本爪のアイゼンも必要になる場合があります。
そのような情報を、事前にその山の周辺に詳しい人間あるいは営業小屋などから得ることは、夏山最盛期の山行とは比べ物にならないほど重要になってくると思われます。
装備の点でも、この時期の栂海新道に入山する上で不足していた物など、問題があったように聞いています。
海外登山の経験があっても、幾つもの山を登っていても、わずか1,000m足らずの雪の里山で道に迷うこともあるのです。
自力下山出来たことは、本当に良かったと思います。ご本人はさぞ必死だったでしょうし、ご家族のご心配も相当だったことでしょう。私たち関係者も、ホッとしているところです。
山小屋管理人に何が出来る、と言われるかもしれません。
しかし、事前にお電話一本頂けていたら、と思う気持ちもあります。
楽しく、そして想い出に残る山であってほしい。
そう願わずにはいられません。
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