北アルプス 朝日小屋

朝日小屋 TEL 080-2962-4639(衛星電話)
北又小屋 TEL 0765-84-8809
開設期間外 朝日小屋連絡所
 〒939-0711 富山県下新川郡朝日町笹川 清水ゆかり
 TEL & FAX 0765-83-2318

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一日で駆け抜けた、憧れの「栂海新道」

2009-10-06

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晩秋の雰囲気、照葉の池付近から見る朝日岳  09.10.5

 昨日(5日)、番頭さん・ミゾテと料理長・ガリの二人は、朝日小屋を出発してその日のうちに「栂海新道」を親不知・日本海まで下りました。
 夕方親不知に到着後は、北又まで車で回送してもらい、昨晩は北又小屋泊まり。

 そして今日(6日)、お昼過ぎに二人は小屋に戻って来ました。

 …果たしてそれは、彼ら二人にとって、 「ちいさな旅」だったのか、はたまた「過酷な修行」だったのか、「有意義な研修」だったのか、足で稼いだ「貴重な出張」となったのでしょうか…

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長栂山では、グリーンロープの撤収

 事の始まりは、4日の夕食時のこと。

 「ねぇ、長栂山まで、グリーンロープを外しに行かなくちゃならないんだよね。どうする?
  ガリ、行きたがっていたし。雨が降らないのは5日だけかもしれないから、行ってくる?」

 「お客様のご予約も無いし、一年に一度だから、ピクニックを兼ねたりしてみんなで出掛ける?
  …(小屋を留守にして)」

 そんなこんなを相談していたところ、

 『栂海新道を、全部歩き通して日本海まで行ったことが無いので、行ってみたい!』という話に…。

 「じゃぁ、行く!? でも、相当キツイよ。
  確実にコースタイムの半分で歩ける人でないと、栂海新道を一日で挑戦しようなんて無理だわ。
  それに、時間だけじゃないょ。最後には、とにかく嫌になるくらい、長いんだから。
  栂海山荘や白鳥小屋に泊まるならともかく、一日で抜けるにはそれ相当の覚悟も必要だし。
  貴方たちだったら、栂海山荘までなら問題なく大丈夫だけど、その後の栂海山荘から白鳥小屋までのアップダウン、金時坂の大変さ、坂田峠から先の長さと最後の辛さ、これは歩いたことのある人間じゃないと分からないなぁ」

 …そんな社長(私)の、半ば“挑発的な”言葉に、余計に気持ちを触発されたのか、二人は「栂海新道」を一日で駆け抜けることになりました。

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元気なガリ、長栂山(2267m)山頂にて  コースの確認をしながら

 5日は、早朝5時半過ぎに朝日小屋を出発。
 とにかく荷を軽くして、という“社長命令”で、必要最低限の荷物。とにかく、いやでも親不知に辿り着かなくてはいけない計画です。

 長栂山では、グリーンロープの撤収作業。

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池塘も、秋の佇まい  黒岩平にて

 紅葉も盛りを少し過ぎた感のあった、アヤメ平・黒岩平だったようですが、秋の終わりを感じさせる雰囲気に、夏の暑い暑い頃に、黒岩山まで草刈りに行ったことが思い出されたことでしょう。

 黒岩山から先は、二人とも“未知の世界”。

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番頭さん・ミゾテ  かなり真剣な様子  サワガニ山(1612.3m)にて

 もちろん、楽しみだけの“個人山行”ではありませんから、ちゃんと地図でポイントを確認し、コースタイムも計測しながら歩きました。

 犬ヶ岳山頂からは、無線連絡が入りました。とても元気な様子。

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「栂海山荘」  ここからは、朝日岳もはっきり見える

 栂海山荘では、中の様子も要チェック。朝日小屋で宿泊された登山者の皆さんが、次に向かわれる場所ですからね。

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「黄蓮の水場」で水を補給する、番頭さん・ミゾテ  水量もかなりある

 「黄蓮の水場」では、水場の様子もちゃんとチェック。降雨の後だったので、水量はかなりあったようで、この10月3連休も安心できるようです。

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白鳥山(1286.9m)と、白鳥小屋

 白鳥小屋も、とても整理されて綺麗に使われている様子でした、との報告。白鳥小屋では、携帯電話も通じることを確認。

 「シキワリの水場」も、大丈夫との事。

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日本海に沈む夕陽  二人は、どんな想いで眺めたことでしょう

 そして坂田峠を経て、親不知・日本海へ。到着は、午後5時20分頃。

 朝日小屋を出発してから、作業をしたり、二つの小屋や水場を確認したりしながら、歩き通して約12時間弱。よく頑張りました!!!

 そして今日、無事に朝日小屋に戻って来た二人デス!!!

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ガリの履いていた靴  泥んこまみれのその様子が、“奮闘”の後を物語る  

 私は、とにかく朝日岳に通じるそれぞれのコース・登山道は、管理人はもちろんですが、アルバイトのみんなにも歩いてもらいたいと思っています。

 何より登山者の皆さんに、より親身になって、また時には少々厳しい態度で接することが出来ること、そして登山道の整備をはじめ安全登山の指導と遭難救助に力を発揮するには、自分自身でルートを何度も歩いて、コースを熟知していてこそという思いがあるからです。

 しかし、小屋開け直後の頃には、主に近い場所を中心として雪渓(残雪)の処理やら登山道の整備が中心となって、なかなか遠くまでは出掛けられません。
 行っても、蓮華温泉方面は白高地沢まで、白馬岳方面は夏山事前パトロールへの参加が主になってしまいます。

 もちろん超繁忙期の間は、小屋の仕事が忙しく、なかなか遠出の時間もままなりません。
 草刈りも、ルートの途中まで(受け持ち区域、それもかなり長い距離ですが)のことが多いのです。

 特に小屋にとっては、大事な番頭さんと料理長ですから、ちょっと小屋を空けることも難しいのです。

 ですから、1泊2日、小屋に戻るまで丸3日必要で、しかも体力的にかなりハードな栂海新道を歩いてくるようなチャンスには、なかなか巡り合えません。

 今回は、本当に良い機会でした。

 …「可愛い子には、旅をさせろ」、こんな親心(“社長”心)が、彼らには通じているでしょうか…

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「文子の池」を過ぎた辺りで、黒岩山・黒岩平・長栂山方向を振り返る

「台風」前夜。。。

2009-10-07

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今日の午後から、山々の様子  pm1:30

 「少々の、台風では」「それなりの、台風でないと」、この北アルプスの高い峰々を直接越えていくことは、なかなか難しいだろう…
 とは、常々、私が“勝手に”心の片隅で思っていることです。

 しかし、どうも今度の台風18号は、かなりの勢力を保ったまま、まともに北アルプスを直撃しそうな雰囲気。。。

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まるで小屋閉めのように、厳重に「雪囲い」  番頭さん・ミゾテと三女・かなえのコンビ

 今朝から午前中にかけての朝日平は、風ひとつない穏やかな様子でした。

 でも、気になる気象情報をたびたびチェックすると、どうもスピードも速まってきていることが分かり、今日の午後からは、お昼休みもそこそこに「全面的な、万全の台風対策!」をすることにしました。

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隙間などの細かいところも、要チェック!!  Pちゃんとガリのコンビ

 すでに小屋閉めに向けていろいろと準備を進めていたので、小屋周りは全部「雪囲い」をしてしまうことに。

 空のドラム缶やガスボンベも、全て片付けました。

 看板類も、まるで小屋閉めのように、取り外しました。

 何事も、『備えあれば、憂いなし』と。

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夕方4時頃、小屋周りの「雪囲い」が終わって

 心配して、いろいろとお電話も頂き、本当に有難うございます。

 今夜は、夜中に何度も起きて様子を見なければいけないかもしれません。

 どうか、何事も無く、台風が通過してくれますように。
 それぞれの地方の皆様にも、甚大な被害が及びませんように。祈ります。

台風18号、通過

2009-10-08

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雨漏りがひどくて、畳が濡れてしまい。。。  am11:40

 3,000m級の北アルプスの峰々をも乗り越えるかのように日本列島を縦断し、各地で猛威を振るい、まるで“韋駄天の如く”駆け抜けていった、台風18号。

 被害に遭われた各地の皆様には、心よりお見舞い申し上げます。

 朝日平でも、7日夜半から雨風共に強まり、日付の替わる頃の8日深夜からは、さらに猛烈な勢いに。

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一日中ストーブを焚いて、畳・床・濡らしてしまった布団などを乾かす

 いろいろと策を施してありましたので、殆ど影響は無かったのですが、「吹き上げて、巻き上げる雨風」のため、サッシやコーキングの隙間から『雨漏り』がしてしまいました。

 真夜中の1時頃から、みんなで畳を上げたり、雑巾で水を拭き取ったり吸い取ったりと、しばらくバタバタしました。

 富山県には朝9時頃に最接近したようですが、そこらで一旦雨風共に弱まり、その後再びお昼前頃から午後2時半近くまでは、“吹き返し”の北西からの雨風が一段と強く吹き荒れました。

 しかし『雨漏り』の他には、特に被害らしい被害もありませんでしたので、ホッと安堵しているところです。

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少し落ち着いてホッとしたら、眠たくなって…  ミゾテとガリ  お昼前頃

 みんな夜中から飛び回ったので、少々お疲れ。

 今日はお客様も無く、一日中お天気が悪かったので、少し片付けなどした他は、休養気味に過ごし、3連休から小屋閉めへと続く数日間に備えました。

『初雪』…台風の過ぎた後

2009-10-09

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初雪の朝  陽の当たる前  am5:58

 昨夜9時の気温は、3℃。 雨。 

 「このままいけば、きっと明日の朝には、雪になるかも」

 そんな予感は、見事に当たりました。

 みんな寝入ってしまったので、何時ごろから降り始めたのかは分かりません。

 早朝5時前には、すでに小屋の前は真っ白でした。

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初雪の朝 朝陽が射して am6:41

 降ったのは、朝日平で約1~2cmほど。朝日岳山頂では2~3cmと思われます。

 一時朝陽が射してきたので、これで融けるだろうと思ったのですが、午前10時頃にまたちらちらと雪が舞い、その後今になっても(お昼前)気温が0℃から上がりません。

 寒くなりました。

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初雪の朝  朝日小屋  am6:43

 明日からの3連休に、朝日小屋をご利用のお客様には、くれぐれも充分な装備と時間の余裕をもって行動されますよう、よろしくお願いいたします。

 特に、白馬岳~朝日岳を縦走予定の登山者の皆様には、計画や装備の再点検(変更を含めて)、詳細な情報収集をされますよう、重ねてお願いいたします。

 朝日小屋は、心からの準備をして皆様をお待ちしておりますが、決して無理や無茶、そして過信はいけません。的確な状況判断をされますよう。

 では、お待ちしております。

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初雪の朝  朝日岳と朝日神社  am8:43

 なお、小川温泉~北又間では、土砂災害の報告はなく、タクシーの通行は可能です。
 また、蓮華温泉方面の白高地沢の仮橋は、今日現在、無事に架かっております。

 正午現在、この台風の影響による、各方面登山道通行止めの連絡はありません。

「初雪」の日、夕空に浮かんで

2009-10-09

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「初雪」の日  ほんの一瞬、夕方の空に浮かび上がった山並み  pm5:39

 今日は一日、何度も何度も外へ出てみた。

 空を見上げたり、ちらちら舞う雪を眺めたり、山を見たり。

 寒暖計を、幾度も確認した。 

 今日の朝日平の最高気温は、1℃。一日中、ほぼ0℃だった。

 明日から3連休。

 …初冬の頃を迎えた白き峰々が、
   どうか無事故で、山を愛する多くの岳人たちを迎えてくれますように…

3連休も終わり、いよいよ小屋閉めへ!!

2009-10-12

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09.10.12  午前9時42分  雪倉岳・白馬岳・旭岳の山並み

 今シーズンも、そろそろ終わりに近付きました。

 この連休を楽しまれた皆さんも、それぞれ下山されました。

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集まってくれた大勢の皆さん  お手伝いを兼ねて、再会やら連休を楽しんで  今日の下山時

 この後は、いよいよ小屋閉めです。

 〆の仕事が残っています。

 最後の仕事を手伝ってくれる「下山部隊」の皆さんが、北又から入山してきてくれて、残りの作業も明日朝から始まります。

 頑張ります!!!

小屋からの「日記」は、これが今シーズン最後!!!

2009-10-13

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今シーズン、有難うございました!!  来シーズンも、よろしく!!  09.10.10

 ただ今の時刻、09年10月13日、午前7時50分。

 この後、インターネットを繋いでいたアンテナなどが撤収されます。

 これが今シーズン、朝日小屋の現地からの最後の「日記」になります。

 明日は、出来れば午前10時頃には小屋を出発し、北又小屋へと下山を始めていきたいと思っています。

 最後の最後まで、事故等のないよう、気を付けて。

 里に下りたら、また報告します。

 今シーズン、本当に有難うございました!!!

 来シーズンも、どうぞ「朝日岳」と「朝日小屋」をよろしくお願いいたします!!!

 では!!!