あのてらちゃんが…プツンとキレた!!
2002-05-23
剱岳山頂より、朝日岳遠望 02.5.3
GWの期間中剱岳方面へ警備に入っていた、県警山岳警備隊・横山 隆分隊長撮影
当日は、剱御前〜別山尾根〜本峰南壁A2稜〜剱岳山頂〜別山尾根下山から剱御前をパトロールされたそうです。
昨シーズン、朝日小屋にアルバイトに来ていたてらちゃんについてのエピソードは、この日記の中でも何度も取り上げて来ました。その温厚で純情な性格、そして柔和な雰囲気は皆さんにも良く伝わっている事と思います。もちろん、彼の怒った顔なんて見た事がありません。
そのてらちゃんが、ある日、プツンとキレました。。。
あれは確か8月上旬だったでしょうか、まだ夏山最盛期で朝日小屋も忙しい毎日が続いていた頃。その日も予約が結構入っていて、登山者の皆さんに快適な山小屋でのひとときを提供するべく、アルバイト部屋もきれいに掃除をしてお客様に明け渡し、前もってアルバイトのみんなは荷物を持って別の場所へ移動していました。山小屋ではよくある話です。
通称「カモシカ」と呼んでいるその部屋は、小屋の建築構造上ちょっと不便な場所にありますが、アルバイト部屋とはいえ居ながらにして海に沈む夕陽を眺められるし、日本海の漁り火も一望できる、若い子たちお気に入りのなかなかの部屋なんです。
部屋掃除の時に空気の入れ替えをしようとしたのですが、外に通じるドアの鍵がどういう訳か開きません。一生懸命最後までドアを開けようと挑戦してくれたてらちゃんでしたが、ウンともスンともどうにもならず、そのうち午後からの準備が始まってしまい、部屋は空気の入れ替えが出来ずじまいでした。ちょっとムッとしていたかもしれません…。
その日「カモシカ」に入っていただいたのは、30名ほどのツアーでいらっしゃったお客様。結構遠くからおいでになっていましたので、私としては皆さんがちょうどひと部屋に入れるし眺めも良いので、「特別室」のつもりでご案内させていただきました。
到着されたお客様の受付や応対に追われ、売店の仕事そして夕食の準備にと、小屋中がバタバタと慌ただしくしていた時間だったと思います(私は少し後から報告を受けたのですが…)。
その「カモシカ」に入られた団体のお客様のうちのお一人が、夕刻、ちょうど食堂付近にいたてらちゃんに。。。
『あのお部屋、西陽が当たって暑いんですけど、クーラーはないんですか!?』
てらちゃん、そこでひと言。。。
『ここは山小屋なので、クーラーなんか、ありません!!』
その後、うちの娘たちから報告がありました。「お母さん、てらちゃんがマジでキレていたよ。あのおとなしいてらちゃんが」…てらちゃんの事ですから怒鳴るわけもなく、よほど気持ちを押さえていたに違いありません。しかしキッパリとした返事をしたようです。
そうなんです、朝日小屋は『山小屋』なんです。標高2,150mの不便な山の中にポツンと建つ、しかし下界では決して味わえない涼風の吹く北アルプスの最北端にある山小屋です。
申し出を受けたてらちゃん、その後も一生懸命ガタガタやって、やっとドアを開ける事に成功しました。
朝日小屋にクーラー?? もちろんあるわけないじゃないですか。。。
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