「山小屋」について
2002-05-23
朝日小屋のキャッチフレーズは
『静けさの中、咲き誇る花たちとの感動の出会い』
GWが明けてから毎日のように、今シーズンの予約やお問合せのお電話を頂いています。宿泊や登山ルートその他について、いろいろな質問をお受けする事もあります。
宿泊申し込みの中で一番多いのは、やはり「個室はありませんか?」というものです。予約の段階では、「申し訳ありませんが、何しろうちは小さな山小屋ですから個室はないんですよ。すみません。」と丁寧にお答えしています。
しかし、一番困るのは小屋に到着されてから「ねぇ、いくらお金払っても良いから個室にしてもらえない?」「物置みたいな所でも構わないから、個室を用意してよ」…中にはお部屋にご案内してから「部屋に入ったら、男の人がいるじゃない。私達困るワ!」。。。(絶句!)
私が小屋の“看板娘”を自認していた(笑)20年前とは、全然違います。
今は、なるべく男女が別室になるように気を配ったり、どんなグループの組合せがベストかいろいろ考えたり、繁忙期にどうしても一枚のお布団をお二人で使用していただく時には(朝日小屋は、どんな最盛期でも1枚2人まで)同性の組合せになるように、とにかく細かくチェックをしています。
それでも完全予約制ではないので、到着順に部屋割りをしている間には、いろいろ思いがけない事になる場合は避けられません。受付の仕事は、それ程細かく気を使います。
先日、剱御前小舎に妹と一緒に泊った時のこと。
剱御前小舎は水の無い場所に建っていますから、飲み水はペットボトルの飲料水を販売していますし、お客様ももちろんそれを承知で宿泊していらっしゃいます。トイレを利用しても手洗いの水はなく、消毒液が置いてあります。
朝になって、さあ顔を洗いましょう歯を磨きましょうと、持参した水を持っていこうと思ってみたものの、「洗面所」というものがないのに気付きました。「あれ、そういえば洗面所がなかったね。そうか、口をゆすいでも吐き出す場所がないんだ…」
そうなんです。剱御前小舎では、私達が日常当たり前と思っている生活は、当たり前ではないのです。後日、小屋に常駐する事のある県警山岳警備隊の人に聞きましたら「僕たちも歯を磨きますが、ちょっと抵抗はありますけど、その汚水は便器に捨てるんですよ」
個室の有無といい、水の有無といい、特に小さな山小屋ではいろいろな制約や不便な事もあるとは思いますが、登山者の皆様にはいろいろご理解を頂きたいと思います。その上で、山小屋としても出来る限りお客様の要望にお答えできるように努力していくつもりでいます。
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