北アルプス 朝日小屋

朝日小屋 TEL 080-2962-4639(衛星電話)
北又小屋 TEL 0765-84-8809
開設期間外 朝日小屋連絡所
 〒939-0711 富山県下新川郡朝日町笹川 清水ゆかり
 TEL & FAX 0765-83-2318

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山歩きは「自己責任の世界」、そして「己の実力次第」

2002-05-23

朝日小屋前より、雪倉岳・白馬岳・旭岳の眺め

 よく「山歩きは自己責任の世界、そして各々の実力次第」というような意味の事を言います。まさにその通りですね。自分がウロウロ少し山を歩くようになって、その意味が良く分かるようになりました。
 その点からいくと、最近のお電話でのお問い合わせの中には、一体どうお答えしたらいいのか分からないような質問も時々あります。
 “山と渓谷”6月号に、「何故増えた山の事故」というテーマで緊急企画が組まれ、長野・岐阜・富山3県の県警山岳警備隊長が座談会形式でいろいろお話をしておられます。その中で「私でも大丈夫ですか?」式の質問がメールや電話で寄せられると書いてありましたが、最後には「あなたの体力、技術、経験などがわかりませんので…」となってしまうと、各担当者がおっしゃっています。
 そうなんですね…、私にも質問していらっしゃる登山者の皆さんの気持ちがわからないわけではありません。
 しかし、例えば白馬岳〜朝日岳〜蓮華温泉のルートが「健脚向き」と書いてあったところで、それがどの程度のものなのか。コースタイムよりずっと遅れてゆっくり歩き、その上お花畑に感激しすぎて休み時間が長くなり12時間もかかりました、とても大変でしたという人もいれば、白馬岳を早朝に出発したら(早い人なら4・5時間で歩く人もいますから)、朝日小屋の前でひと休みして昼食を摂り、その日のうちに北又まで下山してしまう人もいます。
 また、白高地沢には仮橋が掛かっていますが、昨年も梅雨明け直前の増水時に橋が流出し、やむなく復旧するまで徒渉をしなくてはいけないような日(たしか1〜2日)がありました。同じ日の同じ時間帯に白高地沢を通過された登山者の方で、40代の方でも「いやあ、大変でした。1時間も徒渉地点を探し回って、死ぬ思いで渡って来ました」という人もいれば、60半ば過ぎでも山歩きに慣れた単独の登山者なら「まあ、大した事はありませんでした。靴も濡らさずに渡れましたから」とさらりとおっしゃる方もいます。
 あるいは、蓮華温泉から鉱山道というルートはあまり通る人もいないので魅力のあるコースではありますが、昨年朝日小屋に予約のお電話をいただいた方(60代のご夫婦)に「コースは?」とお聞きしたところ「蓮華温泉から鉱山道を来ます」との返事。
 「あそこは残雪時にはルートが分かり難いですし、徒渉もあります。利用される方も少ないので、もしもの場合には、助けを求めてもどうにもならないかもしれません。それでも大丈夫ですね?」と言いましたら、「えっ、徒渉っていうと、川を渡るんですか?お父さ〜ん、川を渡るんだってさあ!」…(と、電話口でお父さんを呼ぶお母さんの声)
 と思えば、「本で読んで、どうしても今年は朝日小屋に行きたいと思っているんですけど、私はどこから行くのが一番良いんでしょうね?」。。。(またまた、絶句!)
 お客様からのご質問にはなるべく丁寧に、わかり易くお答えしたいと思っているのですが、中にはご自分の登山歴から始まって延々と、途中で山歩きを中断した経緯まで詳しく話してくださるオジサマまでいらっしゃるのです。。。
 「山は、自己責任と実力次第」…この基本的な考え方と構図には今後も変化はない、と思って間違いはないのではないでしょうか。