北アルプス 朝日小屋

朝日小屋 TEL 080-2962-4639(衛星電話)
北又小屋 TEL 0765-84-8809
開設期間外 朝日小屋連絡所
 〒939-0711 富山県下新川郡朝日町笹川 清水ゆかり
 TEL & FAX 0765-83-2318

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凍てつく稜線を行く…烏帽子小屋〜三ッ岳〜野口五郎小屋

2003-11-22

真冬の様相    標高2,800m近い稜線で    03.10.31

 真冬の様相    標高2,800m近い稜線で    03.10.31

 「明日、明後日とこのままお天気が持ちそうなので、野口五郎岳へ行きましょう」
 「はぁ。。。私でも行けますか。。。」
 「ダメだったら、引き返します」

 夏だったら快適な稜線歩きも、雪が付いて強い風が吹く高山では、ガイド役の森下さんの的確な判断にある程度は任せるとしても、一体明日はどんな山でどんな危険な目が待っているか分からず絶対大丈夫とは言い切れない中で、不安感を完全に拭い去れずに烏帽子小屋の夜を過ごした私です。
 森下さんは、日の出を待って再び昨日の南沢岳へ撮影に出発。午前中には帰るから、出発は昼食後すぐと決まりました。
 私は、野口五郎岳行きを前にあまり疲労しない方が良いのではという考えから、午前中は“沈殿”することに。お天気も良く、シュラフに入ったままゴロゴロしたり、だあれもいない小屋の周りをウロウロしてみたりして半日過ごしました。
 森下さんが戻られて、軽く昼食を取ってから出発となりました。
 烏帽子小屋から三ッ岳までの砂礫の稜線歩きは、なかなか快適でした。雲も無く、ずっと燕岳から大天井岳への連なりが見え「今歩いているのが“裏”、あれが“表”ねぇ…」などと景色を楽しみながらの稜線漫歩が続きました。途中、白く雪を戴いた槍ヶ岳の勇姿を大きく確認することができ、嬉しかったです。
 しかし、順調に進んだ稜線歩きも、三ッ岳のピークの黒部側を巻く時になって雰囲気が一転しました。
 岩稜と白砂の山。急勾配で切れ落ちている斜面に付いている登山道では、大して積もっているわけでもない雪が、ガチンガチンに凍っています。キックステップなど出来るようなモノではありません。
 森下さんがピッケルで、まるで氷のような雪をひと足毎にカッティングし、靴のつま先がやっと掛かるくらいのステップを切ってくれて、岩に掴まり、慎重にバランスを取りながら注意深く一歩一歩進みました。
 
 『ここを滑り落ちたら、死ぬかもしれない。。。』
 
 そんな恐怖心の中、「ゆかりは、未だ山の怖さを知らない」と誰かがいった言葉を頭の隅に思い浮かべながら、神経を集中して通り抜けました。
 「ここを通過したら、後は大丈夫です」…森下さんにそう言われながら、もう少しもう少しと歩を進めると、右手前方に連なる水晶岳がぐっと大きく迫って来て、また野口五郎岳への確かな道のりも見えて段々と近づいて来ました。
 野口五郎岳に着いた頃は、そろそろ陽が沈み始めようかという時分。元々いつでも強い風が吹くという野口五郎小屋付近なのだそうですが、もの凄い強風が吹いていました。
 
 「頂上はどうします?」
 「はぁ。。。山頂は、この次にします」
 「それじゃぁ、今回の山行は“烏帽子岳・野口五郎岳”ではなく、両方のピークを踏んでいないんだから、“烏帽子小屋・野口五郎小屋”ですネ」
 
 日没近くに小屋に着いて、しばらく続いた恐怖と緊張感から解放された安堵感、また寒さもあったからでしょうか、またも軟弱な言葉を返してしまった私です。(苦笑)
 野口五郎小屋も、その一部が冬期小屋として開放されています。今日も、森下さんと私の他には、誰も利用者はナシ。前日の烏帽子小屋に比べると、少し風の音が大きくはありましたが、それでも快適な冬期小屋には違いありませんでした。
 明日またあの三ッ岳のトラバースを通過しなくてはいけないのかと思うと、なんとなく嫌な気分も。「まさか、今日以上に困難だということにならないだろうか」なんていう思いも過ぎりましたが、「その時はその時か、何とかなるさ!」と半ば諦めて、簡単に夕食を済ませた後休みました。

無事、下山!!

2003-11-22

水晶岳  03.10.31

 水晶岳  03.10.31

 11月1日、野口五郎小屋付近は強風が吹いているものの、天候は時々薄陽が射す曇り空。午前7時過ぎ、小屋を出発しました。
 心配した三ッ岳の斜面のトラバースは、緊張の連続だった前日より歩けないということはなく、慎重を要したものの無事に通過することが出来ました。
 その後は、再び立山連峰、後立山連峰の峰々の眺めを楽しみながら、午前中には烏帽子小屋に到着。小屋の前で昼食を取り、ブナ立尾根を下りました。
 入山の時にはあまり急登であるという感じはしなかったのですが、割と得意な“下り”であったにも関わらず、登山口が近付くにつれて落ち葉に足をすくわれたりしながら、「私、こんな急坂を登って来たのかなぁ。。。」と言いながらの帰路となりました。
 しかし、高瀬ダム〜七倉までのタクシーが10月いっぱいで運行終了していたため、最後の最後で約5キロの道のりを歩かなければいけませんでした。
 ようやく七倉山荘に到着。
 それから、烏帽子小屋と野口五郎小屋を経営しておられる高瀬館へ冬期小屋を利用させて頂いたご挨拶に伺い、お風呂に入って山行の疲れを癒した後、解散となりました。 

山が連なって

2003-11-22

夕照の後立山連峰

 夕照の後立山連峰

   南沢岳から見た針ノ木岳辺り、左には白馬岳も  03.10.30

 初めて行った「北アルプス・裏銀座」
 今更言うのもヘンな話だが、山が、峰が、連なっている様がとてもよく分かった。
 …実感できた。

何を感じたか…

2003-11-22

野口五郎小屋の冬期小屋入口横で   03.11.1

 野口五郎小屋の冬期小屋入口横で   03.11.1

 今回の烏帽子岳・野口五郎岳の山行は、今まで私が経験した「山歩き」とは少し趣きが異なっていました。
 
 春の山、初夏の山、盛夏の山、秋の山、そして初冬の山。
 里山や低山、朝日岳周辺の山はもちろん、笠ヶ岳や大日岳、そして立山・剱岳。
 
 でもいつもそれなりに、数人で行く楽しい山歩きであったり、ガイドさん付きの「お姫様山行」であったり。
 賑やかな山域だったり、少ないけれども必ず登山者に出会う山だったり。

 今回のこの2泊3日の山行は、誰にも会わない、「自分と山だけが対峙できる時間」だったのかもしれません。
 
 森下さんは、山行が終わってから私にこんなことを書いて来られました。
 
 − 今回、ゆかりさんには『自然にただただ囲まれる』ということを経験してもらいたかった −

 何を感じたか…
 
 全てに於いてまだまだ自分の技量の足りなさを感じつつも、いろいろと考えることが出来て、今回は貴重な経験をしたと思います。

うぅ。。。書けませんでした。。。

2003-11-25

白鳥山にて   03.11.23    photo by hitomi

 白鳥山にて   03.11.23    photo by hitomi

 皆さんも、この連休はそれぞれ行楽に、そして山歩きにと、深まる秋を満喫されたことと思います。

 私も23日(日)は、新雪の白鳥山へ行って来ました!!
 
 その日記を書こうと思いながら、何だか昨日は早朝からバタバタしていて、とうとう山行の様子をUPすることが出来ませんでした。
 
 そして今日25日と明日26日の両日は、岐阜・長野・富山三県の「遭難対策協議会」の総会が岐阜県新穂高温泉にて開かれますので、そちらに出席します。
 朝日岳方面遭対協からは、谷口邦夫隊長他、廣田副隊長、県警・古崎分隊長、役場事務局から稲荷課長、そして私・清水理事の5名が出席します。
 
 毎日楽しみに見ていてくださる皆さん、また書けなくて本当にゴメンなさい!

 では、行って来ます!!

40歳代・同い年×3人組=冬の負釣山・雪中テント泊!!

2003-12-15

下山開始前に、記念撮影    03.12.14       photo by 自動

 下山開始前に、記念撮影    03.12.14 photo by 自動

 去年の暮れ、黒部のシュンちゃんが友人の堀クンと二人で出掛けた里山・南保富士での、雪中キャンプ。そこからの夜景の素晴らしさは、私のHPに載せた写真からも充分雰囲気が伺えましたネ。
 
 その『里山での、ゆったりした雪中キャンプ…』に、一年越しでずっと憧れていた私。
 さすがに大晦日には無理としても、何とか12月中には行きたいとシュンちゃんにお願いしていましたが、とうとうその願いが叶いました。
 13日(土)から1泊で、隣町の入善町の最高峰・負釣山(959.3m)へ出掛けるコトに!!
 同行してくれたのは、シュンちゃんと堀クン。40ン歳の同い年3人です。堀クンとは、4月の大地(おおち)以来の山行になりました。
 
 今のところ暖冬気味の今年は、いつになく積雪が少なく、標高400m程の駐車場までも車が入りました。
 登り口から取り付いてからも、雪はナシ。「おいおい、これじゃぁ初冬どころか、晩秋だぜ!」のシュンちゃんの言葉通り、3合目の上までは登山道には全く雪はありません。4合目近くになって、ようやく冬の里山らしく、10〜15cm程の雪が残るようになって来ました。
 朝の天気予報は、雨。出発がお昼近くだったので、午後からお天気が良くなっていくのか、あるいは最悪の冷たい雨から霙に変わるのか、この時季だから仕方ないと覚悟はしていたものの内心は。。。
 日頃の行ないが良い為か(?)歩き始めから雨は殆ど降らず、それどころか途中からは青空も広がり始め、黒部扇状地や日本海がはっきり見えて、周りの南保富士、黒菱山、大地、初雪山と続く稜線も眺める事が出来ました。
 ところが、5合目を過ぎて6合目近くになってから…「吹雪」。やっとさえ細尾根に雪が付いて慎重さを要求されているのに、下から吹き上げるようにして雪が強風に舞っています。
 「やっぱりねぇ、山のお天気は変わり易いワ!」青空を眺めながらいい気になって調子良く登っていたのですが、7合目のベンチでゆっくり小休止の願いも叶わず、とにかく後のお天気が心配になって来たのでそそくさと山頂に向けてあまり休まず歩くコトにしました。
 7合目から上部は距離が短く、急坂さえ注意すれば、夏道ならばもう“ひと踏ん張り!”なのですが、とにかく慎重にトラロープに繋がりながら登りました。
 でもそのうち、気付くと吹雪きもすっかり止んでいます。
 「ねぇ、やっぱり神様だね。最初は歩き易い曇り空、途中で青空を見せて少し楽しませてから、油断させないように“真冬の厳しさ”を味わわせておいて、やっぱり最後は晴れてくるんだから!!」
 山頂に着く頃には、それ程強い風も吹かず、視界も良好。しかし、いつお天気が崩れてくるかもしれないと、さっそく雪を踏み固めてそれぞれのテントを設営してしまうことになりました。
 山頂付近の積雪は、50cm前後だったでしょうか。強風を心配してテントの設営場所に悩みながらも、絶好の“夜景ビュースポット”の誘惑に負けて、山頂に3張りのテントを並べるコトに…。

最高の気分!!…『里山での、雪中テント泊』

2003-12-15

ワクワク、ドキドキ…童心に返って、遊び心満喫!   03.12.13

 ワクワク、ドキドキ…童心に返って、遊び心満喫!   03.12.13

 雪中でのテント泊…北アルプスのような高山では、技術と体力諸々を考えるとなかなか実現させることは出来ませんが、それでもやっぱり憧れますよネ!
 今回は、今シーズンだけでも負釣山へ7・8回は通っているというシュンちゃんと堀クンが同行してくれたので、私も今の時季の1,000m近い山へ登ることが出来ました。
 午後から出発しても余裕があるような里山でしたが、それでもテント泊となれば荷物は大きくなります。それぞれテントを持つ約束でしたし、やっぱり一番心配なのは防寒対策だったので、冬用シュラフの他にシュラフカバー、マットも多目に持って、ダウンジャケットやフリース、ガスボンベや食器、食料…と、3人ともまるで冬山縦走のような“重装備”になってしまいました(苦笑)。

 薄暗くならないうちに(冬の北陸地方では、午後4時前から暗くなる時も)手分けして手際良くテントを設営し終わったら、早々と今宵の宴の席へ。
 私はもちろん、男性2人ともそれ程お酒に強いほうではないのですが、感激の山歩きが出来たご褒美にとビールで乾杯し、テントの中での宴は始まりました。
 実は同行してもらった堀クン、かなりの「名シェフ」。その腕前は、4月の大地でも承知済みだったのですが、今回は私達の為に、前回以上に心のこもった手料理を用意して来てくれました。
 何しろ、“前菜”から始まるのです。用意した笹の葉の上に、色とりどりに飾った4種の品が並びました。そのどれもが手作りで、また本当に美味! 
 「堀シェフ」の用意してくれた絶品の鍋料理をつつきながら、同い年の3人組、飾ることもなくそれ程気を遣うでもなく、山の話、家庭のコト、仕事の話、人生やよもやま等など諸々に遅くまで話が弾みました。
 
 13日の富山県地方は、かなり変わり易いお天気だったとか。下界でも、青空が覗いたり急にザーッと大粒の雨が降って来たり。我が家でも「まぁまぁ、ゆかりはこんな日に…」と気にしていたそうです。私たちも、夜になってお天気が心配になって外を覗きましたし、夜景や星空も気になって時々テントの外へ出てみました。
 山の上のお天気、どうだったと思いますか!?
 晴れ、時々曇り、時に吹雪、時に深深と雪が降り…。
 本当にコロコロと変わるお天気ではありましたが、夕闇の迫る頃にはポツリポツリと燈りはじめた街の灯かりが輝き出しました。また、気付くと深深と粉雪が降っているではありませんか。そしてまた気付くと、テントの外では眼下にキラキラと眩いばかりの黒部扇状地の無数に輝く夜景が見事でした!!雲も少し残っていましたが、きれいな冬の星空もありました。

 …まっさらな新雪に抱かれて、深深と夜は更けていきました。

真冬の朝日岳、闇夜に浮かぶ三日月と、そして流れ星

2003-12-15

この写真、何だか分かりますか??    photo by shun

 この写真、何だか分かりますか??    photo by shun

 
 そう…
 ココアでお化粧したティラミス(ケーキ)に、粉砂糖で浮かび上がらせた朝日岳と前朝日岳、三日月、流れ星なんです!!

 山頂のテントの中での宴もたけなわ、そのうちほろ酔い気分となった頃に出されたデザートで、ナント「堀シェフ」が私の為に手作りして来て下さいました。
 ティラミスを飾る為に、切り絵で細工をした画用紙や、ココアの粉末と粉砂糖、そして粉ふるいまでを、わざわざ山頂まで担ぎ上げてくれて…。

 その美味しさと、優しい心遣い…本当に有り難うございました。