北アルプス 朝日小屋

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山行には「トイレットペーパー」を!?

2001-04-03

 4月2日夕方の朝日岳眺望 ここ数日の寒さで、また白くなったよう…

 さて、新米管理人の私はこのオフシーズンにも様々な仕事及び雑用をこなしているのですが、実際に「山小屋の管理人」という立場で会議に参加したり、あるいは本を読んだりすると、つくづく自分の認識不足を思い知らされます。

 先日「日本トイレ協会」という団体から、「全国山岳トイレシンポジウムin松本」を開催するという案内状を受け取りました。5月に各種団体や関係省庁の参加を得て、「望ましい山でのトイレ・し尿処理について具体的・実践的提案を全国に向け情報発信したい」という内容でした。

 昔から山では「キジヲウツ」と教えられてきた私は、正直言って、山行途中のトイレ事情や山小屋のトイレ問題について今やこれほど真剣に議論が高まっているとは思ってもいなかったのです。 

 長野県山岳総合センターのアンケート調査では、「これからの10年間はトイレ、ゴミなどの環境問題でしょう」とどの小屋も、し尿、雑排水の処理、生ゴミ焼却に高い関心を持っていると報告しています。

 あまりに問題が大きすぎて、もちろんこの「管理人の日記」の中だけでは到底書ききれるものではありませんが、確かに朝日小屋でも相当頭を悩ませているのが現状です。でもそれを各山小屋だけの問題として捉えるには、もう限界があるに違いありません。

 そういえば、2月の「北アルプス三県山小屋協会」の総会でも、山小屋の従業員が登山者の皆さんの残していった汚物および使用済みペーパーを拾って歩いている、という笑えない話も出ていました。

 『せめて、山行中は溶けるトイレットペーパーを使いましょう!!』‥‥気付いた事から徹底してみてはいかがでしょうか。

安曇野にて

2001-04-05

 長野県・松川村  いわさきちひろ美術館前  photo by yukuo masumura

 3日、長野県大町市へ出掛けました。写真家の増村征夫さんにお会いする為に。4月だというのに安曇野の春はまだ遠く、しきりに雪が舞っていました。

 …次から次へとおしゃべりしてしまいました。そういえば朝日小屋で、そして何かの折に増村さんにお会いすることはあっても、いつも私はドタバタしていて、もしかしたらゆっくりお話したのは初めてかもしれません。

 亡くなった父・下澤三郎のこと、朝日岳と朝日小屋のこと、安曇野とその自然へ寄せる想い、もちろん写真のお話‥‥。

 お昼ご飯をご一緒したお洒落でちいさなレストランからは、残念ながら北アルプス後立山の主峰は見えませんでした。

 それでも安曇野の景色は、なんだかすーっと私の中に飛び込んできました。

 いつも2000m級の山々を身近に感じているはずなのに、もしかしたら「安曇野」は何か特別なのかもしれません。

 以前から、ぜひ一度訪ねたいと思っていた松川村の「いわさきちひろ美術館」も案内していただきました。最近少しゆとりを無くしているかな…と感じていた私には、ちひろの絵とゆっくりした時がとても大切に思えました。

 増村さんは、山に関する写真も数多く撮っていらっしゃいますが、ご本人は「山は自然の一部であって、僕は'山岳写真家'ではなく、'自然に魅せられた写真家'なんです」と。だから晴れた日はもちろん、どんよりと雲が垂れ込めた日でも風の中にも、心ときめく自然を大いに感じると話してくださいました。

 それから、写真集などを見ていただくとおわかりかと思いますが、増村さんの写真に添えられている文章は本当にステキですし、ご本人もそのさり気ない言葉のひとつひとつをとても大切にされています。写真ではどうしても表現が足りないと思われる部分も、そこに添えられた文章で感じて欲しいとおっしゃっていました。

 いろいろな写真を目にする時、「実際に映し出される自然の姿だけでなく、そのもっと奥深くにあるものを感じて欲しい」とは、増村さんの言葉です。青い空だけでなく、可憐な花達だけでなく、もっと奥にあるもの…。

 新米管理人・清水ゆかりは、'自然の奥深さを感じられる'ようなそんな「心」を持ちたい…、そう思いました。そして、できれば私なりの方法でそれを誰かに伝えられたらいいと思います。

 最後に。

 増村さんが数年前に朝日小屋で父・下澤三郎を撮られた写真。…ビックリしました。思わず、声が出ませんでした。生意気な表現になるかもしれませんが、「写真」というのはこういうものか、と思いました。

 そして「安曇野」、私も好きになりました。

書くこと…

2001-04-07

 水の豊富な我が家の庭先で…「春」を通り越して「夏」の雰囲気?

 4月も中旬近くになると、田んぼではトラクターが忙しそうに耕起を始め、田植えに向けた準備が本格化していきます。そんな周りの忙しさを横目に、「これも仕事!」と私は今日もパソコンに向かってこの日記を書いています。

 書き始めてから1ヶ月余り。「よくマメに書いているネ」と感心してくださる方から、半分本気・半分冗談で「日記だから毎日書いてヨ!」と言ってくださる方まで。楽しみに読んでいただいていることを期待しながら、今日も何を書こうかナ、と考える毎日です。

 何しろN高校出版部に所属していた私、書くことは結構好きです。書き出したら止まらない!?…とはいきませんが、自分を表現しそれを相手に伝える手段として「もしかしたら私には書くことがあるかもしれない」と思っています。

 しかし「写真」にしてもあるいは「文章」でも、自分の思いをその通り伝える事は本当に難しいことだと思います。「いいなぁ…」と思った情景がそのまま表現できたらいいのだけれど、感じたまま、見たままの姿ではなかなかプリントされてこないのが普通の写真でしょうし、引き込まれるような文章というのにもなかなか巡り会えません。

 それでも朝日小屋のホームページを立ち上げた時、他のコーナーからの最新情報の発信以上に、この日記を大切にしていこうと思いました。

 忙しいシーズン中には小屋では登山者の皆さんと充分お話もできないかもしれないので、山行の前後にぜひ読んで頂いて朝日岳登山の想い出をより豊かにしていただきたいという私の願いがあります。また、いつの日にか朝日小屋を訪ねてみたいと思ってくださる登山者の方が少しでも増えたらとも思います。

 でもこの「管理人の日記」、一日分を書くにはそれなりの時間がかかります。しかし、超多忙な夏山シーズン中でも書き続けることを前提に練習も兼ねているわけですから、なるべく短時間で書き上げられるようにしています。

 表現が稚拙だったり、文章が未熟な点はどうぞお許しください。写真家の増村さんが「たくさん書いているうちに、きっと文章が洗練されてきますよ」と励ましてくださったので、頑張りたいと思います。

 それにしても…、デジカメは難しいです。思った通りなんて絶対に撮れていませんから。いろいろな方がご自分のHPに山行記録として写真を載せていらっしゃいますが、どうしたら「あるがまま、見えるまま」に写ってくれるんでしょうか…。どなたかぜひアドバイスをお願いします!!

お弁当のおかず、何が好きですか?

2001-04-09

 桜の名所・舟川べり  夕焼け色に染まって。
欲張って、桜並木も夕焼けも、飛行機の航跡も…と入れたら構図がめちゃくちゃ!?

 最近、外へ出掛ける時には必ずデジカメ持参です。忙しい時でもエプロン姿のまま家の周りをウロウロしているので、「お母さん、また何してるの?」と娘達にも怪しまれる始末。この涙ぐましい努力がどうにか皆さんに伝わればいいのですが…(笑)

 さて、今日は「お弁当」のお話。

 皆さんは毎日お弁当持参ですか?好きなおかずは何ですか?私は今、今年の「朝日小屋のお弁当」について思案中です。

 山の上という特殊な立地条件の中でも、夕食・朝食はもちろん、皆さんに喜んでもらえるようなお弁当にしようと、どこの山小屋も結構中身については工夫を凝らしていらっしゃる事と思います。

 今でも多くの山小屋は、まだまだ完全予約制ではありません。シーズン真っ只中の山小屋は本当に忙しい!!毎日、その日の予約数とお天気と、稜線を歩く登山者の姿を双眼鏡で拾っては「今日のお客さんの数」を予想しています。そんな最盛期の、夕食後にやってくる朝食の仕込みとお弁当作りの時間帯は、まるで「修羅場」…。(とんだ裏話でした)手をかけるにも限度があります。

 第一に、いくら涼風爽やかな稜線の上でも、真夏の炎天下にザックの一番上に置かれるであろう「お弁当」には絶対に制約があります。食中毒が一番怖いので、特に食材については本当に気を使います。また、バテた人と体力がある人では、受け入れてくれる胃袋の状態も大きく違いますから、何を美味しいと感じるかは人それぞれ。

 いろいろ試食品も取り寄せたりしているのですが、最近は会う人毎に「あなたなら山のお弁当、何が食べたい?」と聞いています。必ず山行に持っていくという「お弁当のおかず」、皆さんは何かありますか?

 ちなみに、富山県人の山でのお弁当を覗いてみると、大概「塩物」…干ダラとか塩イカとか、塩ジャケ、それもかなりしょっぱいのが入っているような気がします。

 もし、「こんなおかずはどう?」という提案があったら、ぜひ掲示板に書き込みをお願いします。美味しいアイデアお待ちしています!!

満開の桜の下で

2001-04-10

 見事に咲いた舟川べりの桜

 昨日までは五分咲き程だった舟川の桜、今日は見事に満開になりました。春霞の中、後ろに見えるはずの朝日岳・白馬岳は残念ながらぼんやりとしていましたが、カメラを構える人、散歩をする人、立ち止まって見入る人…と、川べりは賑やかでした。

 でも、本当に不思議です。つい10日前には、雪もちらつく寒さに「桜なんて、まだまだ!」と勝手に話していた私達、自然はちゃんと芽吹きの時期を見逃しません。春の暖かさをじっと待って、一斉に賑やかに咲き始めるんですから。休日にちょうど見ごろになったらいいな、なんていうのは人間の身勝手そのものですね。

 昨日は一日「雑用の山」をひたすら登り続けていた私。

 机に向かって仕事をし、パソコンに向かうのはそんなに苦手ではないはずなのに、片付けても片付けても後からやってくるこまごまとした用事(本当は'雑用'どころか、大切な'管理人の仕事の山'なのですが)に些か閉口していたのですが、今日は外出ついでに舟川べりを通ってみました。本当は人出が少なければもっと良かったのですが、それでも少しの気分転換をし、また頑張れるような気がしました。

 nyamaさんに「デジカメも少しづつ上手くなってきたネ」と褒められたのもうれしかったなぁ。よ〜し、もうちょっといろいろ考えて撮ってみようっと。…浮き沈みの激しい、単純な私です。

 「自然」の持つたくましさを感じ、満開の桜の並木に心が落着いた今日一日でした。

写真よりも「本物」!?…

2001-04-14

 しゃくなげ  隣家の庭先で。その素晴らしさに思わず見惚れて

 舟川べりの桜は、昨日の風でもうすでに散り初め。少しがっかりしていたら、お隣の庭でそれは立派なしゃくなげに感激し、ちょっといいですかとデジカメに。

 昨日、某「しんぶんA」紙に私の紹介記事が載ってしまいました。全国紙だったものですから、遠くからも沢山の方々から励ましのメールを頂き、また掲示板にも書き込みをして頂きました。本当に有難うございました。

 学生時代にお世話になった友人達からも、「新聞見たヨ!」と20年ぶりで連絡をもらい、思わず感激で涙が出そうになりました。

 沢山の皆さんが応援していてくださる事、本当に心強く思います。頑張らなくっちゃ!!

 ‥‥ところでその新聞に載った写真、やっぱりもうちょっと格好つけて写るべきだったなぁと後悔。山を全く知らないという女性記者さんが熱心に話を聞いてくださって、最後に写真を撮りましょうと山をバックにしたのは良かったのですが、ジーパンにトレーナー姿がいかにも普段の私。それがそのまま全国の皆さんに紹介されてしまって、これじゃ昔の友人が見ても一目で私とわかってしまいます。変わっていないのを、喜ぶべきか悲しむべきか…。

 そういえば2月の山小屋協会の総会の折、某山岳雑誌「岳…」の編集長さんが宴会の席で一生懸命私をカメラに収めていらっしゃったのですが、あんな「ホンノリ桜色」の写真なんかどこかに載ってしまったら、どうしましょう…。桜やしゃくなげのように可愛かったらいいのですが、ちょっと困りますね。

 そこで、ひと言。

 ぜひ「本物」を見に来てください。本物がイイとは決して言いませんが、掲示板でいろいろ書いているのはこんな管理人なんだと確認するためにも、ぜひ今年の夏は朝日小屋にいらして下さい。冗談でも「写真で見たけど、実物のほうがいいネ」と言ってくださればもっとうれしいです(笑)

 朝日小屋で逢える日を楽しみにしています。

17日という日…。

2001-04-17

 春から初夏へ… 桜の後には紫陽花が準備を始めました。

 桜が終わりに近づいたと思ったら、チューリップが満開になって来ました。

 今日17日は、前管理人・下澤三郎の月命日です。昨年6月17日に亡くなってから、早いもので10ヶ月が経ちました。車ですぐの所にいても、忙しくしているとなかなか実家に顔を出す事もままなりません…。

 一年前の今頃はまだ、「山開きにはきっと上るんだ」と半分本気、半分自分を励ますようにベットの上で話していたのを思い出します。春になり段々暖かくなってきて、本人も希望を捨てずに頑張っていた姿が目に浮かびます。

 父が亡くなった6月17日は、小屋開けの日でした。山開きをちょうど一週間後に控え、ヘリコプターで荷揚げをしたその日に、容態が急変しました。

 朝5時に天候を確認しヘリが飛べるだろうと判断、長年アルバイトに来てくれているみんなは北又のヘリポートへと急ぎました。私はみんなを送り出した後、いつものように職場へ向かう前に病院に立ち寄りました。でもその朝の様子はいつもと少し違っていました。

 「今日ヘリが飛ぶと思うよ、大丈夫だよ!きっと飛んだよ!」と父に伝えたところ、もう言葉にはならない声で、しきりに何かを訴えました。私にはそれが今でも「頼んだぞ!ゆかり、頼んだぞ!!」と言っていたように思えます。

 後ろ髪を引かれる思いのまま、病室を後に。山の上から、「無事にヘリは飛びました!」と私の職場に報告があったのが午前9時。病院から、父の容態が急変したのですぐ来るようにと連絡が入ったのが午前9時30分過ぎでした。…そして夕刻、父は家族に見守られながら静かに息を引き取りました。

 人生に、生まれる時、そして終わる時、一年365日の中で、自らその日を選ぶ事が出来ないのはわかっていても、まるで父は自分の終わりの日を敢えて選んでいったと思えるのです。

 大好きだったヘリコプターに自分も乗って行きたかったのでしょう。一緒に乗って作業の無事を確認したら、そのままもっと高い所へと旅立って行ったような気がします。

 その日から数日、「雷鳥」が毎日小屋の玄関まで顔を見せに来ていたそうです。

 …今日はしんみりした話になってしまいましたね。山開きまで後2ヶ月、室堂の山小屋へ嫁いでいる妹も明日入山する予定です。私の忙しさも本格的になってきました。でもふっとした瞬間、「父がいる間に、もっといろいろ聞いておけばよかったなぁ…」と思う時があるのです。

 ‥‥頑張ります。応援していてください。

「日記」は、月曜日までお休みです。

2001-04-18

 アスパラ   明日の晩には我家の食卓に…美味しそうでしょ!?

 実は明日から東京へ行ってきますので、「管理人の日記」は月曜日までお休みさせて下さい。いろいろご挨拶回りやら顔見世やら、その他「営業」に行って来ます。

 何しろ、"知る人ぞ知る"朝日岳です。それはそれで静かな山たる所以なので結構なのですが、営業小屋としてはかなり苦しい思いもしています(笑)。

 正直なところ、「お天気商売」そのものです。お天気が悪ければ、何日もお客さんの顔を見ない日が続きます。

 白馬岳から下ってくる登山者の皆さんの数を数えつつ、三国境からパタッと人影が消えていくのを、実は毎日双眼鏡で見ているんです。お客さんが「いや〜、昨日は○○山荘ですし詰めだったから、ここへ来ると登山客が全然いなくてホッとするねぇ」とおっしゃっるのを笑顔で聞くのは、管理人としては内心複雑…。

 そこで、朝日岳と朝日小屋が大好きで「また来るね!」と言ってくださるお客さんが増える事を期待して、営業活動をして来ます。本当はもっといろいろ回りたいのですが、とりあえず東京へ行ってきます。

 但し、東京は全く不案内の私、どんな珍道中になる事やら…。また月曜日には「管理人の日記」を書けると思いますので、お楽しみに(!?)